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ドラえもん同人誌問題の特異性(後編)

2007/02/11 06:42

 

パロディー作家側には有形無形のルールがあります。
それらは「出版社との衝突を起こさないためもの」「パロディー作家同士で衝突を起こさないためのもの」
「一般読者との衝突を起こさないためのもの」「気持ち良く活動するためのもの」に分類出来ます。
また、WEB文化に根っこのあるパロディーと、同人誌文化に根っこのあるパロディーではルールが異なります。


WEB文化のパロディーは、皆さんなじみの深いものでしょう。
コラージュ」「AA」「コピペ改変」「WEBに有る素材を使ったFlash」などなど。
元々誰かの作ったもの、もしくは誰でも知っている有名なものを素材に作品を作り出す文化です。
私はこちらの世界には浅いのですが、WEBパロディー作家の空気として、
「パロディー作品で利益を出さない、素材となった物の権利を独占しない」というルールがあるように思えます。
のまネコ騒動の時は「素材となった物の権利を独占しない」というルールが侵された為に大騒動になっていましたから。

このルールが有るために、企業側はWEB系パロディーに黙認の姿勢を取っているのではないでしょうか?
ほら、ドラえもんのパロディーFlashは今も溢れているでしょう。


一方同人系パロディー文化には「オリジナリティーが尊ばれる」という不文律があります。
2次創作なのに…と不思議に思われるでしょうが、2次創作だから、なのです。

大きな理由のひとつは、企業や一般読者との摩擦を避けるというものです。
原作と離れた作風だと「原作とは違うモノ」として割り切りやすいでしょ?
原作に似すぎている絵は、一般読者が原作だと勘違いして手にとる可能性が大きくなりますし、
企業側から見れば、同人誌の内容から生まれたイメージが原作自体に投影されかねないので、
似ていない同人誌より、自然と取り締まりは厳しくなります。

二つ目の大きな理由は、絵の巧い方が沢山いるということ。
原作に似た絵を描く作家は「似せて描くのが巧い人」という認識なんです。
評価基準は、オリジナリティーのある内容と、作品そのものの完成度です。

三つ目の理由として、WEB系パロディーのように素材を加工するタイプの作品はタブーとする傾向があります。
コピペ改変のように、他の作家の小説の固有名詞だけ変えて作品を作ること、
コラージュのみで同人誌を作ることはマナー違反とされています。
キャラクターや設定は借りものでも、ストーリーはオリジナルであることが鉄則です。
また、パロディー作品に原作のシーンを組み込む場合でも、自分の絵や文章で描写することがほとんどです。


さて、問題のドラえもん同人誌はどうでしょう。
原作に酷似した絵柄と表紙…おそらく、ドラえもんの理想の最終回をコンセプトに製作したのでしょう。
ストーリーの基盤はチェーンメールです。
チェーンメールではさらっと文章で表現されていた内容を、過不足なくマンガで表現している点は素晴らしいです。
ストーリーの組み立ても、不二子・F・不二夫氏の作風に酷似しており、
同人誌文化に不慣れな方も楽しむことが出来ます。(それによって吉と凶、両方の結果が出ています)

この作品はWEB系パロディーの流儀によって作られた時点で、同人誌作家のルールを逸脱しています。
そうして販売部数が膨らんだ段階で、企業側のルールとWEB系パロディのルールからも外れてしまいました。

またチェーンメールの元となった作品を作ったファンサイト運営者は、このチェーンメールが広がった時点で
「チェーンメールはまことしやかに流布され、原作に対する権利の侵害、熱心なファンに対する冒涜であり、
このような騒ぎになったのは私の責任」としてサイトを閉鎖しています。
つまり、このファンページ運営者も、自分の作品が広く世に知られることを望んではいませんでした


これだけ沢山の人を感動させた反面、これだけ沢山のルールと善意を踏みにじった作品も珍しい、と私は思います。

カテゴリ: エンタメ  > コミック・アニメ    フォルダ: 著作権関連

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コメント(2)

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2007/02/13 18:17

Commented by 知的財産取材班 さん

知的財産取材班の上野です。

確かにドラえもんの「最終話」同人誌は、特異なケースですね。
(だからこそ、出版社が怒って賠償を求め、マスコミが報じるわけですが…)

私の推測ですが、「最終話」を描いたT氏は、
恐らく最初は軽い気持ちで同人誌を作ったのでしょう。
しかし大好評を博したので、「売れるなら売っちゃえ」と欲を出して
どんどん増刷したのではないでしょうか?
もともと純粋なアマチュアではない、プロ活動をしていた作家のようですし…
(※T氏が取材に応じてくれないので、あくまで私の推測です)

それから、WEB系パロディーと漫画の同人誌文化の垣根は
どんどん低くなっていくような気もします。
実際に、ドラえもん「最終話」は、フラッシュ版も、漫画版そのものも
同じようにネット上で見ることができます。

出版社側は、この作品のように同人誌の閉鎖性を打ち破るような
インパクトの強い模倣・パロディー作品が出てくることを
恐れているのではないでしょうか?

 
 

2007/02/14 19:08

Commented by 小人 さん

コメント有難うございます。
拙い記事ですが、知的取材班の方々のお役に立てているようで、大変嬉しく思っております。

> 恐らく最初は軽い気持ちで同人誌を作ったのでしょう。
> しかし大好評を博したので、「売れるなら売っちゃえ」と欲を出して
> どんどん増刷したのではないでしょうか?

そういう無邪気な状況であれば救いがあります。
私もこの問題が持ち上がるまでT氏を知りませんでしたので、推測でしか話せません。
しかし、残念ながら同人誌活動を行うセミプロには、原作への愛情を共有するのが目的ではなく、最初から利益を出すことを目的としているタイプが存在します。
「最初から利益を出すことが目的であったのか」と「途中で利益に目がくらんだのか」では悪質さは違ってくると思います。


> 出版社側は、この作品のように同人誌の閉鎖性を打ち破るような
> インパクトの強い模倣・パロディー作品が出てくることを
> 恐れているのではないでしょうか?

さすがに鋭い。
閉鎖性の高さが一定の秩序を作り出し、口コミの情報伝播能力を高めている側面があります。
ゆえに「取り締まり情報」が出版社側の提示したルールとして機能するので、パロディー同人誌の傾向を、ある程度コントロールすることが出来ます。

このドラえもん同人誌が放置されていれば、WEB系パロディーの流儀を持ち込む同人誌が次々と登場していたかもしれません。そうなれば企業側はパロディー同人誌に対する姿勢を、一から作り直さねばならなくなるでしょうね。

 
 
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2007/02/13 18:25

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