パロディー作家側には有形無形のルールがあります。
それらは「出版社との衝突を起こさないためもの」「パロディー作家同士で衝突を起こさないためのもの」
「一般読者との衝突を起こさないためのもの」「気持ち良く活動するためのもの」に分類出来ます。
また、WEB文化に根っこのあるパロディーと、同人誌文化に根っこのあるパロディーではルールが異なります。
WEB文化のパロディーは、皆さんなじみの深いものでしょう。
「コラージュ」「AA」「コピペ改変」「WEBに有る素材を使ったFlash」などなど。
元々誰かの作ったもの、もしくは誰でも知っている有名なものを素材に作品を作り出す文化です。
私はこちらの世界には浅いのですが、WEBパロディー作家の空気として、
「パロディー作品で利益を出さない、素材となった物の権利を独占しない」というルールがあるように思えます。
のまネコ騒動の時は「素材となった物の権利を独占しない」というルールが侵された為に大騒動になっていましたから。
このルールが有るために、企業側はWEB系パロディーに黙認の姿勢を取っているのではないでしょうか?
ほら、ドラえもんのパロディーFlashは今も溢れているでしょう。
一方同人系パロディー文化には「オリジナリティーが尊ばれる」という不文律があります。
2次創作なのに…と不思議に思われるでしょうが、2次創作だから、なのです。
大きな理由のひとつは、企業や一般読者との摩擦を避けるというものです。
原作と離れた作風だと「原作とは違うモノ」として割り切りやすいでしょ?
原作に似すぎている絵は、一般読者が原作だと勘違いして手にとる可能性が大きくなりますし、
企業側から見れば、同人誌の内容から生まれたイメージが原作自体に投影されかねないので、
似ていない同人誌より、自然と取り締まりは厳しくなります。
二つ目の大きな理由は、絵の巧い方が沢山いるということ。
原作に似た絵を描く作家は「似せて描くのが巧い人」という認識なんです。
評価基準は、オリジナリティーのある内容と、作品そのものの完成度です。
三つ目の理由として、WEB系パロディーのように素材を加工するタイプの作品はタブーとする傾向があります。
コピペ改変のように、他の作家の小説の固有名詞だけ変えて作品を作ること、
コラージュのみで同人誌を作ることはマナー違反とされています。
キャラクターや設定は借りものでも、ストーリーはオリジナルであることが鉄則です。
また、パロディー作品に原作のシーンを組み込む場合でも、自分の絵や文章で描写することがほとんどです。
さて、問題のドラえもん同人誌はどうでしょう。
原作に酷似した絵柄と表紙…おそらく、ドラえもんの理想の最終回をコンセプトに製作したのでしょう。
ストーリーの基盤はチェーンメールです。
チェーンメールではさらっと文章で表現されていた内容を、過不足なくマンガで表現している点は素晴らしいです。
ストーリーの組み立ても、不二子・F・不二夫氏の作風に酷似しており、
同人誌文化に不慣れな方も楽しむことが出来ます。(それによって吉と凶、両方の結果が出ています)
この作品はWEB系パロディーの流儀によって作られた時点で、同人誌作家のルールを逸脱しています。
そうして販売部数が膨らんだ段階で、企業側のルールとWEB系パロディのルールからも外れてしまいました。
またチェーンメールの元となった作品を作ったファンサイト運営者は、このチェーンメールが広がった時点で
「チェーンメールはまことしやかに流布され、原作に対する権利の侵害、熱心なファンに対する冒涜であり、
このような騒ぎになったのは私の責任」としてサイトを閉鎖しています。
つまり、このファンページ運営者も、自分の作品が広く世に知られることを望んではいませんでした。
これだけ沢山の人を感動させた反面、これだけ沢山のルールと善意を踏みにじった作品も珍しい、と私は思います。


by 和楽器しんちゃん(三…
えふえふえふえふえふえふ